包茎手術体験記 No.2〈電話〉

どこで電話をかければ…?

 

 最初の難関はそこだった。まさかこんな所で躓くとは。

 自分は実家暮らしだ。基本的に誰かが家にいる上に、部屋の扉は今時珍しい襖である。つまり、声が丸聞こえだ。包茎手術の話など聞かれたくない。

 かと言って外に出ても東京には人が多い。人気のない場所など中々見つからない。そもそも外で話す内容ではないだろうし、どうしたものか。

 

悩んだ挙句たどり着いた答えは、カラオケだった。

 

 幸い、おひとり様は得意な性質なので、「ついでに歌って帰るか」くらいの軽い気持ちで入店した。そうして、部屋に流れている陽気な音楽を消し、静まり返ったカラオケルームで、大手包茎手術専門クリニック「東京ノーストクリニック」のフリーダイヤルに電話をかけた。

 

 3コールで相手は出た。男性だ。こちらが学生だと分かった途端に、敬語を外してグイグイ話しかけてきた。苦手なタイプである。まあでも、悪い人ではないようで、その人なりのやり方で誠実な対応をしてくれた。

 

 電話では、自分の包茎の状態を説明して手術したい意思を伝えると、すぐに無料診察へと誘導された。偶然、翌日に空き時間があった為、予約をした。驚くほど早い。

 しかも、手術自体は30分程度で希望とあらば診察当日にできるという。驚くほど速い。

 唯一、遅かったのは電話を切るタイミングである。一通り要件が済んだ後に、「頑張って包茎治して良い人生送ってね」的な話を5分くらいされた。完全にありがた迷惑である。

 こっちはフリータイムではない。それがなければ、もう1曲歌えたのである。

 

 ともあれ、予約を取る事には成功した。あとはクリニックに行くだけである。少し心が高鳴っているのは、『猫』で初めて90点を超えたからだろうか。